未来のために
織田作之助が死んだ。「可能性の文学」は日本文学に対する彼の遺書的な抗議であつたが、実は、これくらい当り前の言葉はない。
織田はアンチテエゼだと自ら述べているのだが、文学における可能性とかウソというものは、実はオルソドックスだつたので、そこに日本文学の悲劇もあつたし、織田の悲劇もあつた。
未来においては、あらゆるウソも可能であり、ウソと真実の区別はなく、あらゆるウソも、あらゆる可能性も、やがてそれが生活せられることによつて、全てが真実となるだけだ。そして、それが真実となり得るのは、生活せられることによつてゞはなく、何事も、生活すれば真実でありうるという可能性の中に、より大きな真実性が存する。過去的実人生の真実の如きは取るに足らぬ足跡にすぎぬ。
文学は未来の為にのみ、あるものだ。より良く生きることの為にのみ、あるものだ。人の考えうるあらゆる可能性が真実として作品中に行為せられるところに、文学の正しい意味がある。そこに人間の正当な発展が企てられ、実存している。その眼が未来に定着しない文学は作文にすぎないことを知るべきである。
マニックス解散宣言撤回声明
僕達はこれまで常に自分達が受けた影響を超越できるような作品を創ろうと努力してきた。同時に僕らはプレスと同じくらい偽善的でもある。でも僕らの音楽だけは真実だ。多くの人間は未だにロックについての古臭い理念を持ち続けているけど。有機性なんかクソ食らえ!セックス・ピストルズやジーン・ヴィンセントを聴くのにヘロイン漬けじゃないと解らないなんて法がどこにある?スティーヴィー・ワンダーを理解するのに盲目じゃないとダメだなんて法がどこにある?虚構と偽善のR&R。誰も政治や人生一般に対し完璧さなんか期待しやしない。なのに何故、一介のロック・バンドにそれを期待する?僕達は最高の作品を創る為に自分自身に対し決死のプレッシャーをかけた。僕らの1stアルバムを最高の作品にしたかったが為に「これこそが最初で最後のアルバムなんだ」と自分達に言いきかせてもきた。どんなバンドであろうと創造性が枯渇した時にはいさぎよく朽ち果てるべきだと思ってるから。僕らのこれまでの発言からじゃなく、今書いてきたような視点から審判を下して欲しい。(この世においての)誠実さなんかとっくの昔に腐敗し、変質してしまってる。僕らは決して両親達が望むような子供にはなれないし、20世紀の苦痛全てが、誰かに強制されたものだと言っても決して過言じゃない。音楽ジャーナリズムは当人の創る音楽よりも、その人間の発言のほうを重要なものにしてしまう。ルールは常に勝者によって口述され、メディアは常に敗北者の名前を除去したがる。君の要求が少なければ少ないほど君自身が黙殺されるんだ。かつて僕ら以外のどのバンドが2ndアルバムを作る事を糾弾された?誰もバンドの創る音楽や歌詞そのものに対し、興味なんか示さない。バンドをファッション・アクセサリーみたく扱わないでくれ。僕らを皮ズボンや、僕自身の馬鹿げたコンプレックスなんかで判断しないでくれ。科学そのものだって、馬鹿げてる。解りきった事を勿体ぶって証明しなければならず、そのあげく阿呆らしい結論を容認しなきゃならない。誰の意見だってその人間がかつて読んだ文章からの自己編集ヴァージョンさ。政治家達は嘘を売る。そんな事は誰でも知ってる。どんな宣伝だって偽のイメージを売ってるんだ。なのに何故バンドをやってるような男4人に雪のような純粋さを期待する?こういう点さえ認めてるからこそ「僕らはもっとも正直なバンドだ」と言ってきた。ライヴ・エイドの偽善性を見たかい?ポップ・スター達がさもアフリカの難民を心配してるふりをしながら、その裏では高級ブティックやナイト・クラブへ通い、10代の女の子の裸体からコカインを吸ってたのを。R&Rは決して満たされない愛の賠償みたいなもの。誰も愛せる人間なんか居ないから、その愛を自分自身に向けるんだ。 “個性”という言葉の幻想−個人の思想を表現する権利はその本人が独自の思想を持ち得た場合のみ意味を成す。キリスト教の教義は”死”そのものを非現実的なものに変えてしまった。人はそれが全く無意味である事が解ってても人生計画を立て、毎日を生き長らえていこうとする。これがヘタに知性を得た事の報酬さ。どの学校でも要求されるのは従順さと円満さだけ。刑罰と買収。何故、男どもは女性への憎悪を認めないんだろう?性愛は嘘を言う。が、ポルノグラフィーは真実を映し出す。誰もが民主主義の報いには密かな不満を抱いてる筈なのに−ファシズムは政治的な問題じゃない。人間の脳に巣食う精神的な問題だ。誰の心にも潜む自由への抑圧意識みたいなもの。誰かに命令されたがる人間の服従願望みたいなもの。皆がそれを望んでるからといって僕らは解散するべきなんだろうか?それともあくまでも自分達の意志に従うべきなんだろうか?理想主義や栄誉。全ての純粋な思想が自分への小さな嘘から始まっていく。太宰の恋愛関係は常に正直だったか?全てに満ち足りた人間が他人を愛したりできるだろうか?ロック評論家達は思慮の足りない若者達を虚構のポップ・コンベアー・ベルトで骨抜きにする。頭が悪くて内気な奴ほどそういうシステムに馴れやすいんだ。僕は支配者的な人間を憎悪する。ジッドは言った。ジーンズのコマーシャルを見れば自分の性欲も満足するし、君のポケットから10ポンド札がはみ出してたらそれは「盗んでくれ」と言ってるようなものさ、と。それがどう考えても罪である事にさえ気付かないまま・・・。人間性は常に君を落胆させる。愛は残骸を残し、憎悪は不変性を残す。そして僕は今もそのほこりにまみれたままでいる。
8 April 1993 CENSOR WHITE FUNK BANDS, Richey
サム・シェパード
うまくまわりと調子を合わせたふりをしてはいるが、われわれはみんな同じように、その奥底では狂っている、ときには表面まで狂っている。
Paris, Texas
Walt: I thought you were afraid of heights.
Travis: I'm not afraid of heights. I'm afraid of fallin'.
ウォルト: 高所恐怖症なのかと思ってたよ。
トラヴィス: 高いところは怖くないんだ。落ちるのが怖い。
グッド・ウィル・ハンティング
続きを読む君に芸術のことを訊ねたら、君はきっと今までに出たあらゆる芸術の本の内容を詳しく教えてくれるだろう。例えばミケランジェロ。君は彼について多くのことを知っている。ライフワーク、政治的野心、ローマ法王との関係、性志向、彼の全仕事……、そうだね? だけど、きっと君は僕にシスティナ礼拝堂がどんな匂いなのかを話すことはできない。実際にそこに立ち、あの美しい天井を見上げ、それを目に焼きつけたことがないからだ。君に女性のことを訊ねたら、多分君は自分の好みについて一講義やってくれるだろう。何度か寝た経験だってあるかもしれない。だけど、女性の隣で目を覚まして心の底から幸せだと思うのがどんな気持ちなのか、君には答えられない。君は厄介な子だよ。君に戦争について訊ねるとしよう。きっと君は僕にシェイクスピアを投げかけるだろうね。「友よ、今いちど突破口へ!」と。だけど君は一度だってそんな目に遭ったことはない。君の膝の上で、助けを求める目をしながら息絶えていく親友を見つめた経験なんて、君にはない。君に愛について訊ねたら、君は多分ソネット詩を引用してくれるだろう。だけど君は一度だって、女性を見て完全に脆くなってしまったことなんてない。その目を見ただけで参ってしまうような、神が君のためだけに地上に天使を送り込んだんじゃないかって、そんな気分になってしまうような相手を、君は知らない。君を地獄の底から引き上げてくれるような相手だよ。その人の天使でいられるのがどんな気持ちなのか、その人にそんな愛情を抱くのが、たとえ何があっても、たとえ癌であっても、ずっとそこにいるのが、それがどんなことなのか、君にはわからないだろう。2ヶ月間、病室で彼女の手を取り、彼女を看続け、そこで寝起きするということも君にはわからないだろう。医者が君の目を見て、「面会時間」なんて言葉が君には通じないとわかるんだ。君は本当に失うということがどういうことなのかを知らない。なぜならそれは君が自分自身を愛する以上に何かを愛さなければ起こらないからだ。誰かをそこまで強く愛そうとした経験が君にあるとは思えないな。君を見ても、そこに知的で自信に満ちた男の姿はないよ。僕の前にいるのは、うぬぼれが強く、怖くて仕方なくて怯えてる子供だ。だけど、ウィル、君は天才だ。誰もそれを否定はしない。誰も君の深さを理解できやしないだろう。でも君は僕のことなら何だって知ってるような気でいる――僕の絵を見たという理由でね。そして君は僕の人生をズタズタに引き裂いちまった。君は孤児だろう?
(ウィルは頷く)
君のこれまでの人生がどんなに苦しく、君が今どんな気持ちでいて、君がどんな人間なのかを、僕が少しは知っていると――そしてそれは僕が「オリバー・ツイスト」を読んだからだと、君はそう思うかい? それは君を要約したものかい? 個人的に言わせてもらえば、そんなもんは全くどうだっていい。なぜなら――いいかい、君から何も学べないからだ。本の中からじゃ読み取れないからだ。君が自分で、君自身のことを、君がどんな人間なのかということを話したいと思わない限りね。もしそうなれば、僕は興味を持って聞く。夢中になる。だけどそんなことは嫌なんだろう? 君は自分の口から出るかもしれない言葉が怖いんだ。さあ、ボス。君の番だ。
女と男のいる舗道
私はすべてに責任があると思う 自由だから
手を上げるのも私の責任
右を向くのも私の責任
不幸になるのも私の責任
煙草を吸うのも私の責任
目をつぶるのも私の責任
責任を忘れるのも私の責任
逃げたいのもそうだと思う
すべてが素敵なのよ
素敵だと思えばいいのよ
憎しみ
"C'est l'histoire d'un homme qui tombe d'un immeuble de 50 étages. Le mec au fur et à mesure de sa chute, il se répète sans cesse pour se rassurer: jusqu'ici tout va bien, jusqu'ici tout va bien, jusqu'ici tout va bien... Mais l'important c'est pas la chute, c'est l'atterrissage."
50階建てのビルから飛び降りる男の話だ。落下していく間、奴は気持ちを落ち着かせるために絶えず自分にこう言い聞かせる。「ここまでは、うまくいってる。ここまでは、うまくいってる。ここまでは、うまくいってる」 だけど大事なのは落下じゃない。着地だ。
